「うちは評価制度もあるし、給与テーブルも整えてる。それでもなぜ辞めるんだろう…」
ある運送会社の社長が、月次会議の後にぽつりと漏らした言葉です。
実際、評価シートもあり、年2回の面談も実施している。制度としては“整っている”状態です。それにもかかわらず、現場ではドライバーがじわじわと離職していく。
面談では「特に不満はありません」と言っていた社員が、数ヶ月後に退職を申し出る。
その理由は決まって曖昧です。「ちょっと将来が不安で」「別の会社も見てみたくて」。
制度はあるのに、なぜ人は辞めるのか。
この問いに対して、制度そのものだけを見ていても答えは見えてきません。
評価制度が機能しない構造的な問題
評価制度が原因で離職が増えるとき、多くの場合は「制度そのもの」ではなく、「制度・運用・人」の三つがズレている状態にあります。
制度の問題:目的と現場が噛み合っていない
例えば、「公平性を担保するために細かく評価項目を設計した制度」。
一見すると理想的ですが、現場ではこうなります。
・評価項目が多すぎて管理職が理解しきれない
・評価の基準が曖昧で結局“感覚”になる
・社員側も何を頑張ればいいのか分からない
つまり、「設計としては正しいが、現場では使えない」状態です。
運用の問題:形だけの面談になっている
評価制度は“使って初めて意味を持つもの”です。
しかし現実には、
・面談が業務の延長で形式的に終わる
・評価結果の説明が曖昧
・フィードバックが具体的でない
というケースが多く見られます。
その結果、社員は「評価されている感覚」を持てず、納得感が生まれません。
評価制度があるのに不信感が残るのは、この運用のズレが原因です。
人の問題:管理職が評価者として機能していない
意外と見落とされがちなのがここです。
評価制度は「人が運用する仕組み」です。
つまり、評価する側のスキルや意識が整っていなければ、どんな制度でも崩れます。
・評価を避けたがる管理職
・部下との対話が苦手な上司
・評価基準を理解していない現場リーダー
この状態では、制度があっても“属人的な評価”に戻ってしまいます。
よくある3つの間違い
評価制度が原因で離職が増える企業には、共通する失敗パターンがあります。
① 制度を作れば解決すると思っている
外部のテンプレートやコンサルティングを使って制度を整備する。
ここまでは多くの企業が取り組みます。
しかし、その後の運用設計や教育が不十分なまま放置されると、制度は“形骸化”します。
制度はスタートであってゴールではありません。
ここを誤ると、むしろ「やっているのに機能していない」という不満が強くなります。
② 評価の「結果」だけを伝えている
「今回の評価はBです」「昇給はこのくらいです」
こうした結果の共有だけで終わってしまうと、社員は納得できません。
本来必要なのは、
・なぜその評価なのか
・何をすれば上がるのか
・会社として何を期待しているのか
という“解釈の共有”です。
ここが抜けると、評価はただの通知になってしまいます。
③ 現場に丸投げしている
制度は本部で作り、運用は現場任せ。
これは非常に多いパターンです。
しかし現場は忙しく、評価に時間を割く余裕もなければ、ノウハウも十分ではありません。
結果として、
・評価基準がバラバラになる
・面談の質が人によって大きく変わる
・社員の不満が蓄積する
という状態になります。
解決の方向性:制度よりも“接続”を見直す
ではどうすればいいのか。
結論から言うと、「制度を良くする」よりも「制度と現場をつなぐ設計」を見直す必要があります。
例えば、
・評価項目を減らし、現場で使える粒度にする
・面談の進め方を具体的に設計する(質問例・流れ)
・管理職に対する評価トレーニングを実施する
といった取り組みです。
ただし、ここには現実的な難しさがあります。
・管理職が忙しく、教育の時間が取れない
・現場ごとに状況が違い、統一が難しい
・制度を変えると一時的に混乱が起きる
実際、評価制度の見直しは「正しいことをやればうまくいく」という単純な話ではありません。
現場との摩擦や、一時的な不満も必ず発生します。
そのため、制度単体ではなく、
・どこにズレがあるのか
・どの順番で手を打つべきか
・どこまでを自社でやり、どこを外部に任せるか
といった全体設計が重要になります。
まとめ:離職の原因は制度の“中身”ではない
評価制度があるのに離職が止まらない。
この状態の本質は、「制度が悪い」のではなく、「制度が現場とつながっていない」ことにあります。
そしてこのズレは、内部にいるほど見えにくいものです。
・制度は整っているはずなのに、なぜか機能しない
・現場は頑張っているのに、結果が出ない
・社員の本音が見えない
こうした違和感がある場合、一度立ち止まって構造的に見直す必要があります。
評価制度の設計や運用の見直しは、単なる制度改善ではなく「組織の土台づくり」です。
評価制度の設計や見直しでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。