外国人労働者とのコミュニケーションで大切なこと


「ちゃんと伝えたはずなのに」が繰り返される理由

ある建設会社の現場責任者が、困った表情でこう話していました。

「説明すると、本人は毎回『分かりました』って言うんです。でも翌日になると、違うやり方をしているんですよ。」

相手は、入社して半年ほどの外国人労働者でした。

勤務態度は真面目。
遅刻もない。
周囲への挨拶もきちんとしている。

それでも、作業手順のミスが繰り返される。

責任者は次第に、

「本当に話を聞いているのだろうか」
「日本語がまだ難しいのだろうか」

と感じるようになりました。

しかし本人に話を聞くと、少し違う答えが返ってきました。

「全部は分かっていませんでした。でも、何度も聞いたら迷惑だと思いました。」

このすれ違いは、外国人労働者を雇用している現場でよく起こります。

問題は、単に日本語が分かるかどうかではありません。

「伝えた」と「伝わった」を同じものとして扱ってしまうことに、本質的な原因があります。

外国人労働者とのコミュニケーションは、言葉だけの問題ではない

外国人労働者とのコミュニケーションでトラブルが起きると、多くの企業はまず日本語能力を原因として考えます。

もちろん、日本語の理解度は大切です。

しかし、実際には日本語がある程度話せる人でも、現場でのすれ違いは起こります。

なぜなら、仕事の指示には言葉以外の前提が多く含まれているからです。

例えば、

「いつも通りやっておいて」
「状況を見て判断して」
「前に説明したやり方で」

こうした表現は、日本人同士でも認識がズレることがあります。

外国人労働者にとっては、さらに分かりづらくなります。

つまり、問題は本人の理解力だけではありません。

指示の出し方、確認の仕方、教える人の関わり方、職場の雰囲気。

こうしたものが重なって、コミュニケーションのズレが起きているのです。

制度・運用・人のズレが現場の不安を生む

外国人労働者とのコミュニケーションを考えるときは、制度・運用・人の3つで見ると整理しやすくなります。

制度とは、会社として用意しているルールや仕組みです。

例えば、教育マニュアル、作業手順書、評価制度、相談窓口などです。

これらが日本人向けのままになっていると、外国人労働者は十分に理解できないまま現場に入ることになります。

運用とは、実際に現場でどう教えているかです。

マニュアルはあっても、教える人によって説明が違う。

ある先輩は「こうしろ」と言い、別の先輩は違うやり方を教える。

この状態では、本人は何を基準にすればよいか分かりません。

人の問題とは、職場の関係性や心理的な距離です。

分からないことを聞ける雰囲気があるか。

ミスをしたときに責めるだけになっていないか。

本人が孤立していないか。

こうした要素が、日々のコミュニケーションに影響します。

よくある間違い① 「分かりました」を理解したと判断する

現場で特に多いのが、「分かりました」という返事をそのまま理解と捉えてしまうことです。

外国人労働者が「はい」と答えた。

だから大丈夫だと思った。

しかし実際には、半分しか理解できていないことがあります。

これは本人が嘘をついているわけではありません。

日本語でうまく質問できない。
忙しそうで聞き返しづらい。
分からないと言うと評価が下がる気がする。

こうした不安から、分からなくても返事をしてしまうことがあります。

大切なのは、返事を確認することではなく、理解を確認することです。

例えば、

「今の説明を、自分の言葉で言ってみてもらえますか」
「最初に何をしますか」
「この作業で注意するところはどこですか」

というように、本人が説明できるかを確認する必要があります。

よくある間違い② 「見て覚えて」が通用すると思っている

日本の現場では、昔から「見て覚える」という教え方がよくあります。

もちろん、仕事には実際に見なければ分からない部分もあります。

しかし、外国人労働者に対して「見て覚えて」だけで進めると、認識のズレが起きやすくなります。

ある運送会社では、先輩社員が荷積みの手順を見せながら指導していました。

先輩は、

「見ていれば分かるだろう」

と思っていました。

しかし本人は、

「どこを見ればよいのか分からなかった」

と話しました。

先輩は全体の流れを見せているつもりでも、本人は細かい判断基準を理解できていなかったのです。

「重い荷物は下に置く」
「壊れやすいものは固定する」
「配送順を考えて積む」

こうした当たり前に見える判断も、言葉にして伝えなければ分かりません。

よくある間違い③ 外国人だけの問題だと考える

コミュニケーションの問題が起きると、

「外国人だから難しい」
「日本語がもっと上手になれば解決する」

と考えてしまうことがあります。

しかし実際には、外国人労働者との問題をきっかけに、もともとあった組織課題が見えてくることも多いです。

ある飲食店では、外国人スタッフの定着率が低いことに悩んでいました。

当初は言葉や文化の違いが原因だと考えていました。

ところが状況を確認すると、日本人アルバイトも短期間で辞めていました。

原因は外国人雇用ではなく、教育体制そのものにありました。

教える人によって説明が違う。
忙しい時間帯に新人を放置してしまう。
評価や昇給の基準が曖昧。

これらは外国人だけでなく、日本人にも影響する問題です。

外国人労働者とのコミュニケーション不全は、組織の弱点を映す鏡でもあります。

改善の第一歩は「伝え方」を変えること

外国人労働者とのコミュニケーションを改善するために、最初から大きな制度改革を行う必要はありません。

まずは、日々の伝え方を変えることが重要です。

例えば、長い説明を一度にしない。

一つずつ区切って伝える。

曖昧な表現を避ける。

写真や図を使う。

作業後ではなく、作業前に確認する。

これだけでも現場のミスは減りやすくなります。

また、教える側のルールを揃えることも大切です。

誰が教えても同じ説明になるように、最低限の手順や注意点を整理しておく。

「人によって言うことが違う」を減らすだけで、外国人労働者の不安はかなり軽くなります。

定着と活躍には、評価や将来像の説明も必要

外国人労働者に長く活躍してもらうためには、日々の指示だけでは不十分です。

自分は何を期待されているのか。

何ができるようになれば評価されるのか。

将来的にどのような役割を目指せるのか。

こうしたことが分からないままだと、仕事への意欲は続きにくくなります。

これは日本人社員でも同じです。

ただ、外国人労働者の場合は、言語や文化の違いがあるため、より丁寧に説明する必要があります。

評価制度やキャリアの道筋を分かりやすく伝えることは、定着率の向上にもつながります。

まとめ

外国人労働者とのコミュニケーションで大切なのは、日本語の上手さだけではありません。

重要なのは、「伝えた」で終わらせず、「伝わった」状態をつくることです。

現場で起きるすれ違いの多くは、本人の努力不足だけでは説明できません。

教え方、確認方法、職場の雰囲気、評価の仕組み。

こうした組織側の要素も大きく関わっています。

外国人労働者とのコミュニケーションを見直すことは、結果的に日本人社員も働きやすい職場づくりにつながります。

採用単価の見直しや採用設計でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

著者プロフィール

渡邉宏二|株式会社HRButler 代表取締役

人事評価制度の構築・運用支援および採用代行を専門とする組織人事コンサルタント。 営業担当者から営業責任者、人事担当者から人事責任者までを経験し、現在は経営者として組織運営にも携わる。 現場・管理職・人事・経営のそれぞれの視点を踏まえ、制度を作るだけではなく、実際に運用され成果につながる仕組みづくりを重視している。 中小企業を中心に、人事評価制度、等級制度、給与テーブルの構築・運用支援、採用支援を通じて、持続的な組織成長の実現を支援している。

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