人事制度構築の期間と費用は?失敗しない考え方

「評価制度を作りたい。できれば3か月くらいで完成させたいんだけど」

社長からそう言われた人事担当者が、コンサルティング会社を探し始める。

何社かホームページを見ても、料金が書かれていない。

「結局、いくらかかるんだろう」

問い合わせてみると、数十万円という会社もあれば、数百万円以上の提案になることもある。

期間も3か月、半年、1年とさまざまです。

これでは、初めて人事制度を作る企業ほど「何が適正なのか分からない」と感じるのも当然です。

人事制度構築の期間と費用に大きな差があるのは、単純にコンサルティング会社によって価格が違うからではありません。

そもそも「人事制度を作る」という言葉が指している範囲が、企業によってまったく違うからです。

今回は、人事制度構築に必要な期間と費用を考えるうえで、最初に整理しておきたいポイントを解説します。

人事制度構築には何か月かかるのか

人事制度構築の期間は、制度の範囲や会社の状況によって変わります。

評価制度だけを新しくするのか。

等級制度も作るのか。

給与・賞与まで見直すのか。

職種別の評価基準を作るのか。

社員への説明や評価者研修まで行うのか。

当然、対象範囲が広がるほど必要な期間も長くなります。

そのため「人事制度は○か月で作れる」と一律には言えません。

ただ、実務上は制度の設計そのものよりも、社内で意思決定する時間が想像以上にかかることがあります。

例えば、

「管理職は何を担う役割なのか」

「成果と行動のどちらを重視するのか」

「評価結果によって給与にどの程度差をつけるのか」

こうした問いには、唯一の正解がありません。

会社としてどうしたいのかを決める必要があります。

つまり人事制度構築は、単なる資料作成ではなく、会社の考え方を整理するプロジェクトでもあるのです。

期間を左右する「制度・運用・人」の3つの要素

人事制度構築の期間を考えるときも、「制度」「運用」「人」の3つに分けると分かりやすくなります。

制度

どこまで作るかによって期間は変わります。

評価制度だけなのか、等級・評価・給与まで一体で設計するのか。

さらに営業、施工、介護職、ドライバー、事務など、職種ごとに異なる基準を作る場合は、現場業務の整理にも時間が必要です。

運用

評価のタイミング、評価者、面談方法、評価調整、給与への反映などを決めます。

ここを後回しにすると、制度完成後に、

「ところで誰が評価するの?」

「評価結果はいつ給与に反映するの?」

という話になりかねません。

経営者、人事担当者、管理職など、制度構築に関わる人が増えるほど調整も必要になります。

経営者は成果を重視したい。

現場責任者はプロセスも評価したい。

人事担当者は運用負担を減らしたい。

それぞれの意見を整理しながら会社としての答えを決めるため、一定の時間が必要です。

人事制度構築の費用に差が出る理由

費用についても同様です。

「社員50人の会社だから○万円」と単純に決まるものではありません。

同じ50人の会社でも、一つの職種が中心の企業と、営業・技術・管理・現場など複数の職種がある企業では設計の複雑さが違います。

また、

既存制度を部分的に修正するのか。

ゼロから設計するのか。

評価制度だけなのか。

給与制度まで含めるのか。

社員説明会や評価者研修まで依頼するのか。

これらによって必要な工数は変わります。

そのため、人事制度構築の費用を見るときには、金額そのものより「その金額に何が含まれているのか」を確認することが重要です。

期間と費用でよくある3つの間違い

1.とにかく短期間で完成させようとする

「次の評価までに間に合わせたい」

これは非常によくある要望です。

もちろん期限を決めることは大切です。

しかし、スケジュールを優先しすぎると、重要な議論が十分にできないまま制度が完成してしまいます。

特に経営者の頭の中にある評価基準を言語化する作業は、想像以上に時間がかかることがあります。

「優秀な社員とは?」

と聞けば答えられても、

「では、その社員のどんな行動を評価するのか?」

まで掘り下げると、簡単には決まりません。

完成日から逆算するだけではなく、必要な議論に時間を使えるスケジュールかを見る必要があります。

2.見積金額だけで比較する

例えば、

A社は100万円。

B社は300万円。

これだけを見れば、A社の方が安く見えます。

しかしA社は評価制度のみ、B社は等級・評価・給与制度、社員説明、評価者研修まで含んでいるかもしれません。

逆に、自社には評価制度だけで十分なのに、大規模な制度構築を提案されているケースもあります。

重要なのは、高いか安いかではありません。

自社が必要としている範囲と、提案内容が合っているかです。

3.制度構築後のコストを考えていない

見落とされやすいのが、制度完成後にかかるコストです。

複雑な評価シートを作れば、評価者の作業時間が増えます。

評価会議を何度も行えば、管理職の時間を使います。

制度変更のたびに外部へ依頼しなければならない設計なら、継続的な費用も発生します。

人事制度のコストは、構築時の見積金額だけではありません。

導入後に社内でどれだけの時間と労力が必要になるかも含めて考える必要があります。

「安く、早く作る」が間違いとは限らない

ここで注意したいのは、「時間とお金をかければ良い制度になる」という話ではないことです。

例えば社員20人の会社で、初めて評価制度を導入する。

人事専任者はいない。

評価する管理職も数人しかいない。

こうした会社に、大企業と同じような複雑な制度が必要とは限りません。

むしろ、

「会社として何を評価するのか」

「誰が誰を評価するのか」

「評価結果をどう処遇につなげるのか」

といった基本を整理し、シンプルな制度から始めた方が運用しやすい場合があります。

必要以上に作り込まなければ、期間も費用も抑えられます。

重要なのは、安く作ることでも、高額な制度を導入することでもありません。

今の会社に必要な細かさを見極めることです。

最初に決めるべきは「予算」ではなく「何を変えたいか」

人事制度の相談で、

「いくらくらいでできますか?」

と聞くこと自体はもちろん問題ありません。

ただ、その前に一つ整理しておきたいことがあります。

なぜ人事制度を作りたいのでしょうか。

社員から評価への不満が出ている。

社長一人では社員を評価できなくなってきた。

管理職に評価を任せたい。

頑張っている社員をきちんと処遇したい。

採用した社員に将来のキャリアを示したい。

会社によって目的は違います。

目的が違えば、必要な制度も変わります。

評価基準を整理するだけで解決できる会社もあれば、等級や給与まで見直さなければ解決しない会社もあります。

だからこそ、最初から「評価制度を作る」と決めてしまうのではなく、まず現在の問題と実現したい状態を整理し、そこから必要な制度の範囲を決めることが重要です。

人事制度の見積もりで確認したいこと

外部へ人事制度構築を依頼する場合、金額と納期だけで判断するのではなく、

「どこまでが構築範囲なのか」

「自社の意見はどのように制度へ反映されるのか」

「導入後の運用まで考えられているか」

「完成後、自社だけで運用・修正できるのか」

といった点も確認してみてください。

人事制度は、立派なものを買う仕事ではありません。

会社が社員に何を期待し、どう評価し、どう報いるのか。

その考え方を仕組みにする仕事です。

だからこそ必要な期間や費用も、その会社によって違って当然です。

「いくらで作れるか」から考えるのではなく、

「自社は何を実現したいのか。そのためにはどこまで作る必要があるのか」

ここから考えることで、必要以上に高額・複雑な制度を作ることも、逆に必要な部分を削りすぎることも防ぎやすくなります。


人事制度の構築に必要な期間や費用は、自社に必要な制度の範囲によって変わります。「まず何をどこまで作るべきか」という段階からでも、お気軽にご相談ください。

著者プロフィール

渡邉宏二|株式会社HRButler 代表取締役

人事評価制度の構築・運用支援および採用代行を専門とする組織人事コンサルタント。 営業担当者から営業責任者、人事担当者から人事責任者までを経験し、現在は経営者として組織運営にも携わる。 現場・管理職・人事・経営のそれぞれの視点を踏まえ、制度を作るだけではなく、実際に運用され成果につながる仕組みづくりを重視している。 中小企業を中心に、人事評価制度、等級制度、給与テーブルの構築・運用支援、採用支援を通じて、持続的な組織成長の実現を支援している。

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