社長が多忙でも人事評価制度は構築できる?経営陣との合意形成と進め方

「人事評価制度を構築したいが、社長が多忙で打ち合わせに参加できない」

「社長と役員の考え方が一致しているのか分からない」

「担当者を中心に進めても、最後に大きな変更が必要になるのではないか」

人事評価制度の構築では、こうした悩みが生じることがあります。特に、重要な意思決定を経営者が担う企業では、担当者に制度設計を任せながら、経営者の考えも反映させる必要があります。

結論からいえば、社長がすべての打ち合わせに参加する必要はありません。

重要なのは、経営者の考えを制度に反映し、必要な意思決定を適切なタイミングで行える仕組みを整えることです。

本記事では、社長が多忙な企業でも人事評価制度を構築するための考え方と、具体的な進め方を解説します。


1.社長が判断すべきことと、担当者に任せられること

人事評価制度の構築には、制度の目的を決める段階から、評価項目の検討、評価シートの作成、運用ルールの整備まで、さまざまな工程があります。

これらすべてに経営者が参加する必要はありません。

大切なのは、経営者が判断すべき事項と、プロジェクトメンバーに任せられる事項を区別することです。

検討事項 経営者の役割 担当者の役割
制度構築の目的 制度の目的と基本方針を示す 現状の課題を整理する
求める人材像 会社として期待する姿を示す 職種・役職別に具体化する
評価の基本方針 重視する成果や行動を判断する 評価項目・基準に反映する
等級・処遇 重要な方針を判断・承認する 具体的な仕組みを設計する
評価シート 必要に応じて内容を確認する 評価項目・書式を作成する
運用ルール 重要事項を確認・承認する 運用手順・日程を整備する

※役割分担は一例です。実際には企業の組織体制や権限委譲の状況に応じて調整します。

人事評価制度は、社員の働きぶりを点数化するだけでなく、会社として何を重視し、どのような成果や行動を期待するのかを社員に示す仕組みでもあります。そのため、制度の目的や基本方針には経営者の考えを反映させる必要があります。

一方で、具体的な評価項目や運用方法まで、経営者がすべて決める必要はありません。重要な判断は経営者が担い、詳細設計は担当者を中心に進めることが、経営者の負担を抑えながら制度を構築するポイントです。


2.社長が不在でも制度構築が進む企業の共通点

社長が毎回打ち合わせに参加しなくても、人事評価制度の構築を円滑に進めることは可能です。一方で、打ち合わせを重ねても方針が決まらず、制度設計が停滞してしまうケースもあります。

その違いを生むのは、社長の参加回数ではなく、誰が何を判断し、その結果をどのように共有するかが明確になっているかという点です。制度構築を進めやすい企業では、次の3つが整理されています。

① 経営者の基本的な考えが共有されている

制度を構築する目的や、社員に期待する役割について、プロジェクトメンバーが共通認識を持っています。

② 判断できる範囲が明確になっている

担当者が決められる事項と、経営者の確認が必要な事項が区別されています。

③ 決定事項を確認・共有する方法がある

打ち合わせで決まった内容を記録し、必要な関係者に共有する仕組みがあります。

この3つが整っていれば、社長がすべての打ち合わせに参加しなくても、制度構築を進めやすくなります。

逆に、これらが曖昧な場合は、評価項目の検討に入る前に整理しておくことが重要です。


3.社長と経営陣の方向性を揃える

人事評価制度の構築では、社長と役員の間で考え方が異なることもあります。

例えば、社長は「業績への貢献を重視したい」と考えている一方で、役員は「部下の育成や組織への貢献も評価したい」と考えているかもしれません。

これらは必ずしも対立する考え方ではありません。

業績への貢献と人材育成の両方を評価する制度も設計できます。

ただし、それぞれが異なる前提で議論を進めると、評価項目や評価基準を決める段階で方向性が揃わなくなる可能性があります。

経営者の意向と企業理念の整合性も確認する

制度設計では、経営者の考えを重要な判断基準とする必要があります。

ただし、経営者の意向を無条件に制度へ反映すればよいわけではありません。

例えば、企業理念で「部門を超えた協力」を重視しているにもかかわらず、評価制度が個人の短期的な業績だけを評価する仕組みになっていれば、社員に伝わるメッセージが一致しない可能性があります。

このような場合は、経営者の考えを確認しながら、企業理念や経営方針との関係を整理することが重要です。

大切なのは、社長と役員の意見を単純に多数決で決めることではありません。

それぞれの考えを把握し、会社として何を重視するのかを明確にすることです。

※各立場からの意見を経営者へ戻し、必要に応じて方針を確認する双方向の構造とする。


4.社長が多忙な企業での制度構築の進め方

経営者が継続的に打ち合わせへ参加できない場合は、最初に制度の方向性を確認し、重要な節目で合意を得ながら進める方法が考えられます。

初回のヒアリングが難しい場合

可能であれば、制度構築の初期段階で、一度は経営者の考えを直接確認したいところです。

ただし、経営者の予定によっては、初回から直接ヒアリングすることが難しい場合もあります。

その際は、プロジェクト責任者を通じて考えを確認したり、質問事項を書面で整理して回答を得たりする方法も考えられます。

重要なのは、経営者本人に確認できた事項と、担当者を通じて把握した事項を区別することです。

確認が取れていない事項を、正式に決定した方針として扱わないよう注意が必要です。

完成してから確認するのではなく、途中で確認する

制度のすべてを完成させてから経営者に確認すると、基本方針の違いによって大きな手戻りが生じる可能性があります。

そのため、制度の枠組みや重要な設計事項について、適切な節目で確認することが重要です。

毎回長時間の打ち合わせを設定する必要はありません。

判断が必要な事項を整理し、書面や短時間の打ち合わせで確認してもらう方法もあります。


5.プロジェクト責任者に決定権がない場合はどうするか

人事評価制度の構築では、人事責任者や総務部長がプロジェクトを担当していても、最終的な決定権は経営者にある場合があります。

これは必ずしも問題ではありません。

大切なのは、担当者が判断できない事項を明確にし、適切に経営判断へつなげることです。

判断事項を「宿題」として持ち帰る

打ち合わせの中で経営判断が必要な論点が出た場合、その場で無理に結論を出す必要はありません。

確認事項を宿題として整理し、社内で判断を仰いだうえで、次回の打ち合わせに持ち寄る方法があります。

このとき、単に「社長に確認してください」と依頼するだけでは、判断しにくい場合があります。

選択肢ごとの違いや、制度運用への影響を整理しておくことが有効です。

確認事項 検討する内容 確認先 確認状況
評価で重視する要素 業績評価と役割行動評価の位置づけ 社長 確認待ち
管理職の評価方針 個人業績と部下育成の扱い 社長・担当役員 検討中
職種別の評価 共通項目と職種別項目の範囲 担当役員 確認済み
昇格との連携 評価結果の昇格判断への反映 社長 確認待ち

※上記は確認事項の整理例です。実際の確認先や判断権限は、企業の組織体制に応じて設定します。

確認結果は決定事項として記録し、次の工程へ反映します。

重要な判断が未確定のまま、その判断を前提とする設計を進めないことも大切です。


6.企業の状況によって、適切な進め方は異なる

社長が多忙な企業といっても、組織の状況はさまざまです。

経営者と責任者の間で十分な信頼関係があり、一定の判断が任されている企業もあれば、重要事項は経営者が直接判断する企業もあります。

また、経営陣の間で制度に対する考え方を整理する必要がある企業もあります。

そのため、制度構築の進め方を一律に決めることは適切ではありません。

企業の状況 適した進め方 注意点
責任者に決定権がある 担当者中心で設計 経営者の判断範囲を明確化
社長が最終決定する 節目ごとに確認・承認 確認待ちによる停滞を防ぐ
経営陣の意見が異なる 基本方針の整理を優先 合意前の詳細設計を避ける
社長に直接確認できない 書面・責任者経由で確認 伝聞と正式承認を区別する
ポイント: 適切な進め方は、経営者と責任者の関係性、 役員の関与、社内の意思決定方法によって異なります。

7.制度構築が進まない場合の対処法

経営者の参加が難しく、責任者にも十分な決定権がなく、経営陣の方向性も整理されていない。

こうした状況では、人事評価制度の構築が円滑に進まない可能性があります。

しかし、それだけを理由に制度構築を諦める必要はありません。

制度設計を急ぐよりも、まず必要な意思決定ができる状態を整えることが重要です。

例えば、経営者の考えを確認する方法を決める、役員間で基本方針を共有する、責任者の役割を整理する、承認のタイミングを設定するといった対応が考えられます。

制度を作り始める前に、制度を作れる状態を整える。

経営者がすべての打ち合わせに参加できなくても、 次の3つを整理することで、制度構築を進めやすくなります。

01 経営方針の共有
02 役割と決定権の整理
03 確認・承認方法の設定

必要な意思決定ができる状態を整えることも、 実際に運用できる人事評価制度を構築するための重要な工程です。


8.人事評価制度の構築前に確認したい5つのこと

制度構築を始める前に、次の5項目を確認してみましょう。

制度構築前の確認チェック
0 / 5項目

9.HRButlerが重視する人事評価制度の構築

HRButlerでは、人事評価制度の構築において、経営者がすべての打ち合わせに参加する必要はないと考えています。経営者には経営者が判断すべき事項があり、具体的な制度設計は担当者を中心に進めることで、効率的な制度構築が可能になります。

ただし、経営者の関与を減らすこと自体が目的ではありません。重要なのは、経営者の考えを制度に反映させながら、必要な場面で適切な意思決定ができる体制を整えることです。

そのため、HRButlerでは、経営者・役員・プロジェクト責任者それぞれの役割や権限を確認し、企業の状況に合わせた進め方をご提案しています。経営陣の方向性が揃っていない場合や、責任者の判断権限が明確でない場合には、制度設計を急がず、合意形成や意思決定の仕組みを整えるところから支援します。

経営者の貴重な時間を重要な判断に集中させ、現場でも無理なく運用できる人事評価制度を構築する。 これがHRButlerの基本的な考え方です。

社長が多忙でも、制度構築を進める方法はあります。

HRButlerでは、経営者・役員・担当者の関係性や 意思決定の方法を踏まえ、 企業の状況に合わせた人事評価制度の構築をご支援しています。

「社長が毎回参加できない」
「担当者だけでは判断できない」
そのような場合も、まずはご相談ください。

人事評価制度の構築について相談する

現在の状況をお伺いしたうえで、適切な進め方をご提案します。


まとめ|重要なのは意思決定の仕組み

社長が多忙で打ち合わせに参加できない場合でも、人事評価制度の構築は可能です。

ただし、経営者の考えを確認せずに制度を設計したり、重要な判断を曖昧にしたまま進めたりすることは避ける必要があります。

大切なのは、経営者・役員・プロジェクト責任者の関係性を踏まえ、制度の基本方針を共有しながら、必要な意思決定を段階的に行うことです。

また、企業によって適切な進め方は異なります。

経営者がどの程度参加できるかだけでなく、誰が何を判断し、どのように合意形成を進めるかを考えることが重要です。

人事評価制度は、完成させることが目的ではありません。会社の考え方を反映し、社員に伝わり、実際に運用できる制度にすることが重要です。

著者プロフィール

渡邉宏二|株式会社HRButler 代表取締役

人事評価制度の構築・運用支援および採用代行を専門とする組織人事コンサルタント。 営業担当者から営業責任者、人事担当者から人事責任者までを経験し、現在は経営者として組織運営にも携わる。 現場・管理職・人事・経営のそれぞれの視点を踏まえ、制度を作るだけではなく、実際に運用され成果につながる仕組みづくりを重視している。 中小企業を中心に、人事評価制度、等級制度、給与テーブルの構築・運用支援、採用支援を通じて、持続的な組織成長の実現を支援している。

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