「期待しています」と言われても響かなくなった
評価面談の場で、ある管理職が部下へこう伝えました。
「君には期待しているよ。」
部下は笑顔で頷きます。
面談は和やかに終わりました。
しかし面談後、その社員は同僚へこう漏らします。
「毎年同じことを言われるんですよね。」
実は昇給の理由もよく分からない。
キャリアの話も曖昧。
何を頑張れば評価されるのかも見えない。
それでも毎年、
「期待している。」
と言われる。
社員が期待を失う時というのは、大きなトラブルが起きた時ではありません。
会社の言葉と現実が少しずつズレていく時です。
そして、その積み重ねがエンゲージメントの低下につながっていきます。
エンゲージメントは「やる気」ではない
エンゲージメントという言葉を聞くと、
「社員のモチベーション」
をイメージする人も少なくありません。
しかし本質は少し違います。
エンゲージメントとは、
「この会社で頑張る意味がある」
「この会社と一緒に成長したい」
という信頼や期待に近い感情です。
だからこそ、
給料を上げた。
福利厚生を増やした。
イベントを開催した。
それだけで高まるものではありません。
社員は日々の経験を通じて、
「この会社は本当に言ったことを実行する会社なのか」
を見ています。
制度・運用・人のズレが期待を失わせる
エンゲージメントが低い会社では、多くの場合、制度・運用・人のどこかにズレがあります。
例えば制度。
評価制度はある。
キャリア制度もある。
しかし社員が内容を理解していない。
すると制度は存在しないのと同じになります。
運用の問題もあります。
評価面談は実施している。
しかし面談内容は毎年同じ。
目標設定も形だけ。
これでは社員は会社の本気度を感じられません。
そして人の問題。
直属の上司との関係は、エンゲージメントへ大きな影響を与えます。
会社への不満の多くは、実際には会社そのものではなく、日々接する上司との関係から生まれていることも少なくありません。
よくある間違い① 福利厚生で解決しようとする
ある企業では、社員満足度向上のために福利厚生を大幅に増やしました。
食事補助。
資格取得支援。
レクリエーション制度。
社員からの反応も悪くありませんでした。
しかし一年後。
エンゲージメント調査の結果はほとんど改善しませんでした。
理由は単純です。
社員が不満を感じていたのは福利厚生ではなかったからです。
評価への納得感。
将来への不安。
上司との関係。
根本原因が別の場所にあったのです。
よくある間違い② アンケートを取って終わる
近年はエンゲージメント調査を実施する企業が増えています。
しかし調査だけで終わるケースも少なくありません。
社員は意見を書く。
会社は集計する。
結果を共有する。
そして何も変わらない。
これを繰り返すと、
「どうせ言っても変わらない。」
という諦めが生まれます。
実は、アンケート結果が悪いことよりも、改善が行われないことの方が組織への信頼を失わせることがあります。
よくある間違い③ 管理職へ丸投げする
エンゲージメント向上を管理職任せにしている会社もあります。
しかし管理職自身が疲弊しているケースも少なくありません。
現場管理。
人材育成。
評価面談。
採用対応。
クレーム対応。
様々な役割を抱えています。
その状態で、
「部下のエンゲージメントも上げてください。」
と言われても限界があります。
組織の課題は組織で解決する必要があります。
エンゲージメントが高い会社の共通点
エンゲージメントが高い会社は、特別な制度を持っているわけではありません。
むしろ当たり前のことを徹底しています。
約束したことを守る。
評価理由を説明する。
定期的に対話する。
成長機会を提供する。
社員の声を放置しない。
こうした積み重ねが信頼を作ります。
そして信頼の積み重ねが、エンゲージメントになります。
社員は会社に期待できなくなった時に静かに離れていく
離職する社員だけが危険なのではありません。
本当に怖いのは、
辞めないけれど期待もしない社員です。
最低限の仕事はする。
指示されたことはやる。
しかし自ら提案しない。
改善もしない。
挑戦もしない。
こうした状態が組織全体へ広がると、エンゲージメントは低下していきます。
だからこそ重要なのは、やる気を高めることではなく、期待を失わせないことなのです。
まとめ
エンゲージメントが上がらない理由は、社員の意識の問題ではありません。
会社が発信しているメッセージと、社員が日々体験している現実との間にズレが生じていることが原因であるケースが少なくありません。
エンゲージメント向上のためには、新しい施策を増やす前に、自社が社員との約束を守れているかを見直すことが重要です。
社員の期待は、一度失うと取り戻すのに時間がかかります。
だからこそ日々の制度運用やマネジメントが重要なのです。
エンゲージメント向上や評価制度の見直し、管理職育成でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。